「子どもを持ちたいけど、夜勤・当直のある病院薬剤師のままで続けられるか不安」「育休は取れても復帰後に時短勤務や夜勤免除が本当に使えるか分からない」「保育園のお迎えがある中で今の職場に戻れるか心配」

子育てを見据えたとき、病院薬剤師として働き続けることへの不安はリアルです。

制度の上では育休・産休・時短勤務の権利は保障されていますが、「制度がある」ことと「実際に使いやすい職場かどうか」は別の話です。

この記事では、子育てを見据えた病院薬剤師が妊娠前から準備すべきこと・育休後の復帰でつまずきやすいポイント・転職するなら何を基準に選ぶべきかを、データをもとに具体的に解説します。

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子育てと病院薬剤師の仕事を両立できるか

夜勤・当直がある働き方と育児の両立の現実

病院薬剤師の夜勤・当直は月2〜4回程度が一般的ですが、乳幼児期の育児中は「夜間の授乳・発熱対応・保育園の送迎」が毎日発生します。夜勤・当直の夜にパートナーや家族のサポートが得られない状況では、現実的に続けることが難しくなるケースがあります。

育児・介護休業法では、子が3歳に達するまでの間、事業主は労働者の請求に基づいて夜勤の免除をしなければならないと定めています。法律上は夜勤免除を請求できる権利がありますが、少人数体制の病院薬剤部では「申し出にくい雰囲気・代替要員がいない」という現場の実態があることも否定できません。

制度を使えるかどうかは「制度が存在するか」だけでなく「その職場で実際に使いやすい環境かどうか」によって決まります。妊娠前・転職前に現場の実態を確認しておくことが重要です。

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育児休業法の改正で何が変わったか

2022年(令和4年)に育児・介護休業法が改正され、育休取得をめぐる環境が変わりました。主な変更点は以下のとおりです。

2022年育児・介護休業法改正の主なポイント
  • 育休取得意向確認の義務化(令和4年4月〜):妊娠・出産の申出があった際、事業主が育休取得の意向を個別に確認することが義務になった
  • 産後パパ育休の創設(令和4年10月〜):出生後8週間以内に父親が最大4週間の育休を2回に分けて取得できる制度が新設された
  • 育休の分割取得が可能に(令和4年10月〜):従来は原則1回だった育休が、2回に分けて取得できるようになった
  • 育休取得率の公表義務化(令和5年4月〜):常時雇用1,000人超の企業は育休取得率の公表が義務化された

これらの改正により、育休を取得しやすい環境は法律的に整備されてきています。ただし中小規模の職場ではこれらの制度が周知・運用されていないケースもあるため、転職先の規模・制度の実施状況を確認することが依然として重要です。

病院薬剤師のまま育休を取得して復帰することはできますか?

法律上は当然に可能です。ただし「育休が取りやすい職場かどうか」は職場の規模・体制によって大きく異なります。大規模病院や公的病院は制度が整っているケースが多い一方、少人数体制の民間中小病院では使いにくい場合もあります。職場の実態確認が先決です。

妊娠前に確認しておくべきこと

現在の職場の育休・産休制度の実態

厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」によると、女性の育児休業取得率は80.2%で高水準ですが、これは全業種・全職場の平均です。取得しやすい職場とそうでない職場の差は大きく、薬剤部の人員体制・管理職の理解度・過去の取得実績によって職場ごとに状況が異なります。

現在の職場について事前に確認しておきたい項目は以下の3点です。

現職で確認しておくべき3つのポイント
  • ①育休取得実績:過去3〜5年で実際に育休を取得した薬剤師の人数。ゼロなら「制度はある・使えない雰囲気」の可能性が高い
  • ②復帰後の時短勤務実績:育休後に時短勤務で復帰した薬剤師がいるか。時短勤務は3歳まで申請できる権利だが、実際に使えているかが重要
  • ③夜勤免除の運用実態:育児中の夜勤免除申請を実際に行った薬剤師がいるか。少人数体制では代替要員がいないため申し出にくいケースがある

妊娠前に転職すべきか・妊娠後でも転職できるか

結論からいえば、転職を考えているなら妊娠前が大きく有利です。妊娠中・産休中の転職活動は体力的・心理的な負担が大きく、採用側も「すぐ育休に入る可能性がある」という懸念から採用を見送るケースがあります。

法律上は妊娠を理由とした採用差別は禁止されていますが、現実的に「妊娠中であることを申告するか」「入職後すぐに産休に入るタイミングか」は採用選考に影響する可能性があります。転職を考えているなら妊娠前・妊娠の可能性がない時期のうちに転職活動を終えておくことが安全です。

また、育児休業を取得するためには「雇用期間が1年以上であること(有期雇用の場合)」などの要件があります。転職直後の育休取得は条件によっては難しい場合があるため、「育休を取得したい時期の1年以上前」に転職を完了させることが推奨されます。

育休後の復帰でつまずきやすいポイント

時短勤務・夜勤免除が実際に使えるかを確認する

育休から復帰後に最も問題になるのが「時短勤務・夜勤免除を実際に使えるか」という点です。育児・介護休業法では3歳未満の子を持つ従業員への時短勤務(1日6時間)適用が事業主の義務ですが、職場の体制・代替人員の有無によって「使いにくい状況」になるケースがあります。

特に問題になりやすいのが「1人薬剤師体制の薬局・薬剤部の人員が不足している職場」です。時短勤務になると残りのスタッフへの業務負荷が増えるため、職場内の雰囲気として使いにくくなることがあります。転職先を選ぶ際には「複数の薬剤師が在籍し人員の余裕がある職場かどうか」を必ず確認してください。

保育園のお迎えに対応できる職場かどうか

子育て中の薬剤師が復帰後に直面するリアルな問題のひとつが「保育園のお迎えに間に合うか」という時間の問題です。保育園の延長保育を含めても18〜19時が限界というケースは多く、残業が常態化している職場では現実的に両立が難しくなります。

転職先の勤務終了時間・残業実態を事前に確認することが重要です。求人票の「定時18時」という記載でも、実際の終業が19〜20時になっている職場では子育てとの両立が困難になります。「残業は月何時間か」「お迎えのための早退は可能か」をエージェント経由で確認することが現実的です。

育休後に今の病院に戻ることを考えていますが、時短勤務で夜勤免除も申請したいと思っています。病院でそれは現実的に使えますか?

法律上は申請できる権利があります。ただし実際に使えるかは「薬剤部の人員体制・過去の取得実績・管理者の理解度」で変わります。復帰前に管理者と具体的に話し合い、時短・夜勤免除の適用期間と業務分担を明確にしておくことが、復帰後に使いやすくする現実的な方法です。

子育て中の転職先の選び方

子育てに向いている職場の具体的な条件

子育て中の薬剤師が職場に求める条件は、大きく5つに整理できます。転職先を選ぶ際の優先順位をつける材料として活用してください。

子育て中の薬剤師が転職先に求める主な条件
  • ①夜勤・当直がないこと:夜間の子育て対応と夜勤の両立は体力的に困難。夜間業務がない職場が必須条件になりやすい
  • ②時短勤務・育休の取得実績があること:制度があるだけでなく「実際に使われた実績」がある職場を選ぶ
  • ③定時退社・残業が少ないこと:保育園のお迎え時間に間に合う勤務体制かどうかを確認する
  • ④複数スタッフ在籍・人員に余裕があること:急な欠勤・お迎え早退が発生しても周囲に負担がかかりすぎない体制が必要
  • ⑤勤務地・通勤距離が短いこと:子育て中は通勤時間が長いほど体力的・時間的な余裕がなくなる。自宅から近い職場が優先される傾向がある

病院・薬局・DS・企業で子育て環境を比較する

転職先の業種ごとに、子育て環境の特徴は異なります。それぞれのメリット・デメリットを整理します。

業種別・子育て環境の特徴
  • 病院(現職):夜勤・当直の免除を請求できるが人員体制次第で使いにくい。規模が大きいほど制度が整備されている傾向。公的病院は安定的
  • 調剤薬局(チェーン):夜勤なし・土日休みの店舗が多い。育休実績が豊富な大手チェーンを選べば取得しやすい。時短勤務も運用されているケースが多い
  • ドラッグストア:年収水準が高い一方、土日出勤・シフト制が多い。子育て中は土日出勤があると家族のサポートが必要になる
  • クリニック・診療所:夜勤なし・診療時間が決まっており定時退社しやすい。ただし少人数体制では急な欠勤が職場に影響しやすい
  • 企業(産業保健・製薬等):土日休み・年間休日多め・育休制度が充実している大手企業が多い。薬剤師免許を活かした業務で子育てとの両立例が多い

転職するなら子育て開始前がベストな理由

妊娠前の転職活動を勧める理由

子育てを見据えた転職は「妊娠が確定する前・子育てが始まる前」に行うことが最も選択肢が広く、条件交渉もしやすい時期です。理由は主に以下の3点です。

①体力的・精神的な余裕がある:妊娠中は体調変化が大きく、転職活動の負担が重なると精神的に消耗します。余裕がある時期に情報収集・応募・面接を行える方が質の高い判断ができます。

②採用側の懸念が生じない:妊娠中・産前の転職は「すぐ育休に入る可能性がある」という採用側の懸念が現実的に生じます。法律上は妊娠を理由とした採用差別は禁止されていますが、採用過程での影響ゼロとは言い切れません。

③育休取得の要件を満たしやすい:雇用保険の被保険者として一定期間在籍していることが育休給付金受給の要件になります(育休開始前2年間に11日以上働いた月が12ヶ月以上必要)。転職後すぐの妊娠では給付金受給の要件を満たせない可能性があるため、転職後1年以上経ってから妊娠するスケジュールが安心です。

転職のタイミングと育休給付金の関係

育児休業給付金(育休中の収入保障)は、雇用保険から支給されます。受給要件は「育休開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること」です。

転職してから12ヶ月以内に育休に入った場合、前職の雇用保険加入期間と通算できるケースもありますが、転職と妊娠・育休のタイミングによって給付金を受けられない状況になる可能性があります。「いつ妊娠したいか」という計画を持って逆算した転職タイミングを専門のエージェントや社会保険労務士に相談することが安全です。

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まとめ

子育てを見据えた病院薬剤師の転職は、「妊娠前・子育て開始前の余裕があるタイミング」に行うことが最も選択肢が広く安全です。育休取得率は全体で80.2%と高水準ですが、職場ごとの実態差は大きく「制度あり・使えない雰囲気」の職場も存在します。

転職先を選ぶ際は「夜勤なし・時短勤務の取得実績・複数スタッフ在籍・残業の少なさ・勤務地の近さ」の5点を確認のポイントにすることで、子育てとの両立がしやすい環境かどうかを判断できます。調剤薬局(大手チェーン)は育休・時短の実績が豊富なケースが多く、病院薬剤師からの転職先として選ばれやすい業種です。

転職活動の第一歩はエージェントへの相談です。「育休実績あり・夜勤なし・時短可」の条件で求人を絞り込んでもらうことで、子育てと両立できる職場の選択肢を具体的に把握できます。

関連記事:結婚を考える病院薬剤師の働き方|夜勤・転職・職場選びのポイント

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